バッハ無伴奏補完委員会
 

バッハ無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータCD聞き比べ-独断ランキング


J.S.バッハの『無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ』CDのうち、手持ちのものについて独断でランキングをつけてみた。
これを聴いておけば間違いない!と言える名盤DISCは、アーロン・ロザンド(Aaron Rosand)に決定。全曲でなくてもよければ、ヒラリー・ハーンも良い。


それ以外は、どれも一長一短で、必ず良い点と悪い点が混在している。それぞれのCDで、「良さ」の質が異なるというか、目指す方向性が違っていて、1本の物差しで単純に測ることができないのだ。そのため、順位を付けるというのはちょっと無理があるのだが、ここでは管理人が個人的に「聴きたくなる」という基準で無理矢理ランクをつけてみた。
そのため、3位以下の順位は気分によって流動的であり得ることを申し添えておく。


順位 演奏者 コメント
堂々の
第1位
アーロン・ロザンド
Aaron Rosand
つ、ついに来たか…
音色、解釈ともに完璧。全曲にわたって、退屈する楽章は一つもなく、演奏の仕方等で不満になる点も全くない。
ピリオド奏法ではなく、ロマン的な演奏。やっぱりこうでなくては…現時点で、最高にして最強の全曲録音。
ただし、日本国内では販売されておらず、国外からの発送となるため、届くまでに2週間くらいはかかる。しかし、それだけの価値はある…これぞ決定版。永遠の銘盤にして超定番に勝手に認定する!


シャコンヌがちょっとさっぱり系で、あまり怨念がこもっていない。オーソドックスの集大成的なヒラリー・ハーンとは対照的にどちらかというと個性的で独自の解釈。それでも音楽的には完璧。
とにかくテクニックが安定していて、フーガも多声部な感じがものすごくよく再現されていてすごい。
一拍目の頭の音を長めに伸ばしたり、フレーズの終わりで遅めにしたりというアゴーギクが多用されているが、それがまた的確で適切なので、納得する。何より、音に魅力があふれている。


これにを聴かずして、バッハ無伴奏は語れない!


第2位 ヒラリー・ハーン
後半の3曲、パルティータ2番・3番とソナタ3番しか聴くことができないが、現時点で最高の録音と思われる。
特にパルティータの方は絶品で、遅めのテンポで弾かれるシャコンヌが最高峰。
録音当時17歳だったらしいが、まるで小学生が弾いているかのように、邪心なく純粋に楽譜から感じ取ったことをひたすら素直にそのまま表現している。これこそ、真にバッハの意図した音楽だったのではないだろうか。そう、神に捧げるための音楽である。
演奏家個人の個性だとか主張だとか…そんなものは、必要ないのだ。
しかも、シェリングよりも魅力がある。
恐らく、今になって全曲録音しても、この時のような演奏にはならないだろう。全曲録音にしなかったのは、全人類的な損失と言える。


第3位 ギドン・クレーメル1980年(旧)
この旧録音には、致命的な欠点がある。パルティータ3番のガヴォットの弾き方がおかしいのだ。それ以外は、只ならぬ緊迫感、困難な重音を易々と弾いてのける超人的テクニック、厳粛な荘重さ、あらゆる点で素晴らしい演奏。
ソナタもパルティータも、退屈するところが全くない。ガヴォットの欠点がなければ、最高の演奏かもしれなかった。



第4位 イツァーク・
パールマン
特にこれといった欠点がなく、最も標準的な演奏かもしれない。緊迫感、荘重さ、悲壮感などとてもよく出ていると思う。
特に、まるでオルガン曲のように壮麗に和音が響くシャコンヌがすごい。ソナタ系のフーガもうまい。
パールマンはテクニックが安定しているし、解釈も妥当でオーソドックスなので、安心して聴いていられる。
パールマン特有の、野太い男性的な音色に抵抗がなければ、国内ではベストな全曲盤かもしれない…4位としたのは、2位と3位ががとくに思い入れが強かったためで、非常に個人的な趣味嗜好による。
第5位 千住真理子
これが、なかなかいいのだ。
日本的な情念というか怨念が渦巻いており、非常に聴き応えがある。日本人にはやはり、日本人の演奏がしっくり来るのかもしれない。
ただ、パルティータ1番だけがやや退屈という欠点を持つ。ちょっと練りこみ不足だったのだろう。
音色の荒さは、欠点というよりもむしろ味わい深さになっている。生演奏を聴いているかのような臨場感と、伝わってくる情感は他では味わえない。
第6位 ギドン・クレーメル2001年(新)
ギドン・クレーメル2度目になる、2001年から2002年にかけての全曲録音。
物凄い集中力、凄まじい緊迫感、とにかく尋常ではない。パルティータ1番のアルマンドやソナタ3番のアダージョでは、付点音符をものすごく鋭く尖ったような音とリズムで弾いている。
垂直に切り立った断崖絶壁をよじ登るかのような命がけの危険を思わせる峻厳さに満ち満ちている。
まるで激辛料理を食べているような強烈な刺激。
辛いものが苦手な人には、とうていお勧めできない。だが、この刺激はちょっとクセになる。
変化球的だが、聴いていて面白い演奏。


パルティータ3番ガヴォットの弾き方はちゃんと直っているが、繰り返される主題のうち最後の部分だけ、旧録音と同じような勝手なアゴーギクを付けている。「最後くらい、いいだろ!」「俺はこう弾きたいんだ!」というクレーメルのこだわりが聴かれる。が、そのこだわりを私はついに理解しないだろう。


決して正統派にはなり得ないが、非常に刺激的であり、これはこれで良い。

第7位 カール・ズスケ
全体に、とても明るい音でふんわりほんわり、やわらかく軽く弾いている。緊迫感や荘厳さといったものは全くと言っていいほどないし、刺激もなく、それほど面白い演奏ではないのだが、特にこれといった欠点がないのだ。
演奏は、楽譜通りできっちり手堅い。
また、地元ドイツの人だけあって、ドイツ的な様式はきちんと守っている。各曲のキャラクターは正確に把握されている。特にパルティータ1番は優れている。
ソナタ3番、パルティータ3番といった長調系でも、音色が合っていてなかなか良い。


妙なクセがなく、刺激的でもないので、「とりあえず無伴奏でも聞くかな」という時には良い。リラックスタイムやBGMには最適だと思う。癒し系であり、繰り返し何度も聴くのに向いている。


刺激がない分、繰り返し何度も聴いても飽きないという良さがある。


第8位 ベンヤミン・シュミット
ピリオド奏法(古楽器の奏法)を取り入れた、モダン楽器による演奏。ピリオド奏法自体は好きではないのだが、これはなかなかの秀演である。
他のCDでは退屈になりがちな、各ソナタの4楽章やパルティータ第1番といった、16部音符等で間断なく動き続ける曲において、ある音は上声部を、別な音は中声部を、そしてまた別な音が下声部をそれぞれ意味しており、通して弾いたときに擬似ポリフォニーの効果を発揮する、というバッハの意図が、ものの見事に再現されているのだ。こうした「声部の歌い分け」という点において、これに勝る演奏は今のところ聴いたことがない。
ただし、明るい音色で軽く弾ききっているため、緊迫感や荘厳さ、荘重さはほとんどない。そのため、いまいち物足りない。物足りないが、聴いていて楽しめる演奏ではある。時々聴くには良い。

ただ、たまに細かい音符が出てくると急にテンポアップして弾き飛ばしてしまうのは、いただけない…


第9位 ナタン・ミルシテイン
魅力はある。人を惹きつけるものは持っている。
が、どうも気合が入りすぎるのか、音符がやたらと伸び縮みして、リズムが狂うのが目立つ。
伴奏がないのをいいことに、一定のテンポを保つ気などさらさらなく、好き放題に弾いているように聞こえる。
そこが、自分的には気になってしまう。


さらに、クーラントが穏やかすぎてクーラントっぽくないという欠点も持つ。


欠点はあるが、何度も聴かせるだけの魅力はある。特に、ソナタ3番のフーガが上手い。

第10位 ヘンリク・シェリング
端正で、自分勝手な恣意など微塵もなく、楽譜に忠実な演奏。適度な緊迫感もあり、良い演奏だとは思う。音色もいい。チェロのフルニエが楷書体なら、シェリングは活字の明朝体か?と思う。


しかしどうも、魅力に欠けるというか。
特に、後半のパルティータ2・3番、ソナタ3番あたりで他のCDに後れをとる。
もっと上位でもいいのかもしれないが、やはりちょっと不満が残るDiscである。

第11位 アルテュール・グリュミオー
パルティータの第1番~第3番までを収録したもの。
グリュミオーの豊潤な音色はいいんだけども、自分的にはとても退屈で聴く気がしない演奏である。
第12位 クリスティアン・テツラフ
退屈すぎて、ものの数秒と聴いていられない。
聴くだけ時間の無駄、と思えてしまう。


だが、あくまでこれは個人的な感想にすぎないので、鵜呑みにしないでもらいたい。

第13位 シギスヴァルト・クイケン1981年(旧)
だって、あなた古楽器でしょう。
所長がそう言ってるのよ、あなたのこと。
古楽器はしつこいとか。
古楽器は用済みだとか。


古楽器はしつこいとか。
古楽器は用済みだとか…


改めて見返してみると、かなりめちゃくちゃなランキングではある(-_-;)
自分は、古楽器が嫌いなんですよ…

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