無伴奏チェロ組曲の各舞曲考察
~プレリュード(Prelude)~


プレリュードは、「前奏曲」と訳されるように、特定の舞曲ではない。


もともとは、トッカータと同じく「試し弾き」のための曲を意味する言葉であった。「指慣らし」と言ってもいいかもしれない。
そういう目で見てみると、確かに第1番、第3番、第4番のプレリュードは練習曲のような風体をなしているようにも見える。しかし、バッハのプレリュードは単なる試し弾きや練習曲の域を超えて、非常に優れた音楽性を有する芸術作品となった。


第1番、第4番のプレリュードは分散和音による和声進行に主眼が置かれている。


第3番プレリュードも分散和音主体ではあるが、スケールも取り入れることにより、さらに歌うことが重要となっている。


第2番プレリュードは一見、単旋律に見えるが実は複数声部の進行を内在させた複雑な曲である。


第5番のプレリュードはいわゆる「フランス風序曲」の様式を取り入れており、荘重な出だしに続いてフーガが現れる。フランス風序曲ではフーガ部の後にもう一度、出だしの荘重な部分が戻ってくるのだが、第5番プレリュードではフーガ部がそのまま終結になだれ込む。


第6番プレリュードは、バロック時代の協奏曲によく用いられていた「リトルネッロ形式」で作られている。これは、恐らく協奏曲の第1楽章を模して作曲されたのではないだろうか。最初に奏される主題がTutti(全合奏)をイメージしており、間に挟まれる様々な走句はSolo(独奏)をイメージしているように思われてならない。後半、16部音符で細かく動く部分は、カデンツァさながらだと思うのだが、いかがなものだろうか。

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