バッハ無伴奏補完委員会


 

バッハ無伴奏チェロ組曲との出会い


バッハ、無伴奏チェロ組曲。
この第1番のプレリュードの出だしだけは、CMで使われていたこともあってよく耳にして知っていた。


しかし、それ以外の楽章やまして第2番、第3番といった他の曲のことや、全部で第6番まであることなども、初めは全く知らなかった。


私がまだ18歳くらいのころだったと記憶しているが、ある時、知人がミッシャ・マイスキーの演奏になるCDを1枚、借してくれた。確か、第1番と第2番が収録されていたんだったと思う。さっそく、聴いてみると…


おぉ!あの曲だ!!


と思ったのも束の間。
あの耳に馴染んだ出だしを過ぎたら、もうマイスキーが何をやっているのか皆目わからない。


記憶を辿ってみるに、あれはマイスキー氏1回目の録音(1984年-1985年)だったんじゃないかな。とても生真面目に譜面通りに弾いていた演奏だったと思う。
だから、というワケでもないだろうが、自分にはこれの何がいいのか、全く理解不能だった。
まさに意味不明。
チェロが何やら低音でゴソゴソやっているだけで、音楽の形というか、「どういう曲なのか」がさっぱり分からない(ように聞こえた)。


それでも、有名な曲なんだから、いい曲であるに違いない…と思って何度も繰り返し聴いてみた。
しかし、何度聴いてもやっぱり意味不明だった(T_T)
第1番のプレリュードの出だし以外、ひとっつも良くも何ともない。
ワケ分からんだけ!(>_<)


ただ、第1番、2番のそれぞれのメヌエット(第5楽章)の出だしのメロディーだけは、ちょっとだけ印象に残った。しかしそれ以外は、何が良いのか全く謎のまま…
(´_` )そして自分にとって、このバッハの無伴奏チェロ組曲は「良さが不明の謎な曲」として印象に残ったのだった。


しかしその後も、「あれだけ有名な曲なんだから、何か自分に理解できない良さがあるに違いない…その“良さ”とは何なんだろう…?いつか知りたいものだ」という思いがくすぶり続けていた。


そしてそれから数年の月日が流れ。
私は浪人時代を経て大学へと進学し、ヴィオラを弾くようになっていた。 ある日、楽器屋さんで「ヴィオラ用の楽譜で何かいいのないかな~」と何の気なしに探していたら、バッハの無伴奏チェロ組曲をヴィオラ用に編曲した(と言っても、1オクターヴ上げただけじゃん!)楽譜を発見したのだ。


おぉおっ!こ、これは!!あの謎の無伴奏チェロ組曲!


ヴィオラ用の曲って、あまりたくさんないから、こういうのも貴重なんだよね。
自分で弾いてみれば、その曲の良さも分かるかもしれない!
そう思ったた私は、即購入。さっそく、家に帰ってヴィオラで弾いてみた。



すると、次第に、弾きこむにつれ…


な、なんだ、これは!?(O_O;)…


すごく、いい(゜д゜ )


いいではないですか、この曲たちは。
何だってまた、あの時聴いたマイスキーのCDはあれほどまでに退屈で意味不明だったんだ!?ますますもって、ワケが分からない…演奏が悪いのか?あのマイスキーが?(-_-;)
かといって、当時大学生だった私は、そうポンポンとCDを買えるほど裕福でもなかったので、もっと良さの分かるCDなり何なりがあれば欲しいなぁ、と漠然と思っていた。


そんな自分にとって、無料でいろいろ聴けるFM放送は当時貴重な音源で、いろいろとカセットテープに録音しては聴いて楽しんでいたものだった。


そんなある日、何と、ハインリヒ・シフというチェリストが演奏会でバッハの無伴奏チェロ組曲を弾いた模様を、ライブ録音で放送してくれるというではありませんか。さっそくテープに録音して、聴いてみたら…


うおぉっ( ̄▽ ̄)!


まさに、まさに驚天動地。 第1番のプレリュードからしてが、かなり速いテンポで生き生きと躍動的に弾かれている。
他の楽章もまたしかり。
あんなに退屈で意味不明だった曲が、こんなに楽しいものだったとは…こりゃすごい。こんな演奏も「アリ」なのか!(ただ、この放送は今を去ること20年近くも前のことだし、CD化もされてないだろうから、今さら入手するのは不可能だと思われます)


このときのシフの演奏会は、確かバッハ無伴奏チェロ組曲全曲演奏会だったように記憶しているが、放送時間の都合なのか、FMで流してくれたのは1番から5番までの5曲だった。
それでも、今まで退屈なだけだと思っていたこの曲にも、確かな"良さ”があるんだと認識させてくれた実に貴重な体験であった(T▽T)


とはいえ、6番まであるこの曲集の全ての曲、全ての楽章について"良さ”を理解したわけではなかったので、それから私はとりあえずヴィオラで自ら演奏してみることで、この曲集に秘められている(と期待される)魅力を余すところなく味わい尽くしてみたい、と思ったのだった。

(2009年のブログ記事による)


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