無伴奏チェロ組曲の各舞曲考察
~クーラント(Courante, Corrente)~
クーラントは、3拍子の舞曲である。
一般に、「急速な」テンポであるとされるが、ただ速く弾けばよいというものではない。
3拍子ではあるが、そのリズムは円環を描く3拍子ではなく、どちらかというと三角形を描くような3拍子で、リズムが尖って角ばっている印象を受ける。
丸みを帯びた3拍子のメヌエットなどとは、同じ3拍子でもかなり対照的な性格の舞曲だ。
クーラントには、フランス型のクーラント(Courante)と、イタリア型のコレンテ(Corrente)がある。
無伴奏チェロ組曲第5番ハ短調のクーラントは典型的なフランス型で、他にバッハの作品では管弦楽組曲第1番ハ長調のクーラントも同じくフランス型に属する。
フランス型の特徴は、2分の3拍子でリズムが付点音符、4分音符、8部音符と複雑に変化することである。
これに対しイタリア型のコレンテでは、16部音符や8部音符で間断なく走り続けるのが特徴となっている。
無伴奏チェロ組曲では、完全にフランス型と思えるのは第5番のクーラントだけで、他はみなイタリア型に分類されるように思われる。
どちらの型であるにせよ、ゆったりしたアルマンドとは正反対に、落ち着くことなく元気よく活発に走り回るのがクーラントのキャラクターである。フランス語で「走る」を意味する言葉がその語源である、とも言う。
また最初にも述べたとおり、リズムがとんがっているような印象を受けるのも特徴的だ。
第5番のクーラントなどは、舞曲の優雅さと同時に嵐のような荒々しさも感じられる。
エンリコ・マイナルディの演奏するクーラントでは、あまりに穏やかでアルマンドとの差別化が明確でなく、個人的には演奏の仕方が間違っているのではないか、とさえ考えている。
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