バッハ無伴奏補完委員会


 

ヤーノシュ・シュタルケルのバッハ無伴奏チェロ組曲


マイナルディのバッハも良かったんだが、もっとこう、刺激的というか、特にクーラントはもっと速いテンポで弾いている演奏のCDはないものか、とAmazonで探してみた。
Amazonは、ちょっとずつ試聴できる商品があるので、とてもありがたい。これでハズレを買わなくても済むというものだ。


まずは検索すると必ず上位に出てくるカザルス。 カスタマーレビューを読むと、大絶賛の一方で退屈だ、つまらないという意見もある。 そしてアンナー・ビルスマの古楽器による録音がいい、という見解が多々聞かれるではないか。


両方、試聴してみた。


カザルスの方は、そんな悪く言うほど退屈なものでもないと思ったけど、やはりどうも音色がいかにも重々しい。 重厚で、荘重で、荘厳ですらあるのかもしれないが…どうも自分の求めているバッハとは違う気がする。悪くないんだけどね…(-_-;)
対して、アンナー・ビルスマの古楽器、バロックチェロでの演奏(つまり旧盤の方)。 確かに、音楽がとても生き生きとしていてまさに生命を得た感じだ。 45秒程度の試聴だと、もっと続きを聞きたくもなる。 J.S.バッハの意図した音楽は、まさにこうだったのでは?と思わせる実に素晴らしい演奏だ。 …が、やはりそこは古楽器である。 あのバロックチェロ独特の、ふにゃん~、という響きがどうも、物足りなさを感じさせてしまう。 バッハの時代はそういうものだったのかもしれないけど、やっぱり現代の、もっとハリのあるモダン・チェロの音で聴きたいなぁ、と思った。
なので、迷った末にカザルスもビルスマも自分的には却下しました。
他の演奏者のは何かないかな?と探してると、ヤーノシュ・シュタルケルの名前を発見。



シュタルケルについては、FMでクラシックを聴いていた頃にその演奏に触れ、自分としては気に入っている演奏家だったので、さっそく試聴してみた。


おっ…( ̄▽ ̄ )♪


これは刺激的♪ 音が自分の中にぐいぐい入ってきますね。 リズムも良いし、これは買いだな…さっそく、購入しました。ちなみに1992年6月の録音です。 早く届かないかなぁ…とわくわくして待つこと2日目くらいにポストに届く。
さっそく聴いてみると…


うぉっΣ( ̄□ ̄;)!!


こ、これは…まさに求めていた通り! 実に歯切れ良く、端正な音づくり。 非常に刺激的で、自分の感性にどんどんめり込んでくる感じ。 聴いていて全く飽きないし、一度聴き始めるとやめたくなくなる。 ずーっと最後まで聴いてしまう…しかも聴いているとテンションが上がって頭が冴えてくる。 だから、寝る前に流すと眠れなくなってしまう(^^;)
問題のクーラントも実にきびきびと小気味よいテンポで弾ききってくれるので、自分としては大満足だ。 特に、一番すごかったのは第5番ハ短調BWV1011である。 このプレリュードはすごい。 何がすごいって、この第5番のプレリュードは後半がフーガを模した形式で書かれているのだが、たいていの演奏ではこの部分がフーガに聞こえない。何かよく分からないままに進んで終わることがほとんどなのに、シュタルケルでは全く違う。ものすごく、立体的に、多声的に表現されているのだ。そのため、まるでフーガを聴いているかのような錯覚に陥らせてくれるのである。チェロ一本で演奏されるフーガ(正確にはフーガ風だけど)。これには、さすがに舌を巻いた。


これは、本当にすごい。


チェロ1本で、これほどまでに立体的、多声的な表現を可能にするとは…シュタルケル、只者ではないな。
第2番ニ短調BWV1008も、すごく哀切迫る演奏で、別に悲しいこともないのに泣かされてしまいましたよ。 いや、とにかく素晴らしいの一言だ。シュタルケルやりおるな。


特集 バッハ;無伴奏チェロ組曲 10種聴き比べ」というサイトでは、ポール・トルトゥリエを第一位に挙げてシュタルケルを2位としているけど、自分的にはシュタルケルが1位で全然OKだ。もう第5番のプレリュードだけで最高の演奏と讃えるに値する。


(上記サイトで文字化けするときは、ブラウザ上部のツールバーから表示→エンコード→日本語(自動選択)を選ぶとちゃんと表示されるようです)


上記サイトでも、第5番について『堂々たる立派な演奏。人によってはトルトゥリエを措いてベストに選ぶだろう。プレリュード前半は、まさに「悲劇的」の標題がふさわしく、終結に向けて構築される立体的な響きは見事。』と述べている。 「人によっては」の人というのが、他ならぬこの私であることはもはや言うまでもない(^_^;)
また、第3番について「トルトゥリエが正統派英雄なのに対し、シュタルケルの演奏は、どこか乱世の梟雄、曹操や斎藤道三を連想させる。(笑)」と述べられている。なるほど、乱世の梟雄(きょうゆう)とは、またうまいこと言ったものだ。実にいいとこ突いてると思う。
その辺がまた、自分の好みに合っていたのかもしれない。 まぁ、シュタルケルを万人にお勧めできるかどうかは分からないけども、こうやってたくさん出ているCDの中から、自分なりのベスト盤を探すというのはなかなかに楽しいものですな。 J.S.バッハの世界は果てることもなく…

(2009年のブログ記事による)

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