バッハ無伴奏補完委員会

 

エンリコ・マイナルディのバッハ無伴奏チェロ組曲

バッハの無伴奏チェロ組曲のCDって、たくさん出てるけど結局どれが一番いいんだろうか?
結論を先に言ってしまえば、そんな一番などというものは


ない


ということになるのだが、それでもやはり手元に置いてスタンダードに聴きたい一枚を選びたくなるのが人情というもの。
人によって、カザルスがいい、ビルスマがいい、というのはいくらでもありますな(トルトゥリエ、モルテン・ソイテンという意見も)。


Amazonのカスタマー・レビューを見ると、カザルス派とビルスマ派に真っ二つに分かれて論争しているように見える。 好みは人それぞれで、これが絶対!というのは決められないのだなぁ、と思わせて面白い。



さて、それでは自分はどれを選ぼうか…?


TOWER RECORDに立ち寄ったら、たまたまエンリコ・マイナルディというチェリストの録音をCDで復刻したという盤が店頭に並んでいた。
1954年4月(第1番)から1955年10月(第6番)にかけて録音されたこの盤のCDは、タワーレコード限定発売とのことでAmazonでも売っていない。
タワレコの解説によると、「オリジナル海外盤は中古LP市場において1枚10数万という高値が付くほどに稀少価値が高いのです」とのこと。
そんなすごい録音なら、買わない手はない。


さっそく、購入して聴いてみた。


最初の第1番プレリュードが始まってすぐに、これは当たりだな、と感じた。
何がいいって、音がすごくいい。
ここで言う“音”というのは、録音や再生状態などの音響関係のことではなくて、演奏者のマイナルディ自身が出すチェロの音色のことです。
とにかく“音”そのものが、すごく柔らかくて暖かくて、マイルドな口溶け。 聴いているだけでとてもくつろいだ気分になれる。 リラックスできる。 演奏も、あまり重々しくならず、意外に生き生きしている。


ただ、テンポが全体に遅め。
特に、クーラントは遅すぎて、もはやクーラントではない。
完全に舞曲のリズムをなくしてしまっている。
が、そんな欠点も許せてしまうほど、とにかく音色が魅力的で優しい。 なるほど、これは貴重な盤だなと思った。
あまり、惹き込まれて聴き入ってしまうような刺激性はないので、仕事中のBGMにもよし、寝る前に流せばいつしか心地よい安眠へと誘ってくれ、朝まで熟睡できる。 かといって、退屈極まりないわけでもなく、じっくりと腰を据えて聴き込んでもまた味わい深いという逸品。 実に素晴らしい。特に、自分の場合は第4番の良さに目覚めさせられました。


バッハ無伴奏チェロ組曲との出会い」で述べた、今から20年近くも前のハインリヒ・シフのライブ録音しか今まで持っていなかった私は、シフの演奏でも第1番、2番、3番までしかその“良さ”を理解していませんでした(ロストロポーヴィチの2番、5番のみ収録されたCDは所持していたが)。


しかし、このマイナルディの録音で、その4番が実にいい味わいを醸し出していることに気付かされたのです。 …ただ、5番、6番については、マイナルディの演奏でもイマイチ“良さ”を理解しきれませんでした…(-_-;) そのようなワケで、マイナルディの5番、6番は、寝る前の一枚としてたいへん重宝しています(^_^;) 本当に熟睡できます☆(^O^;) いや、全く「使える」一枚ですよ。これは。

(2009年のブログ記事による)

追記:
マイナルディの演奏する無伴奏チェロ組曲第5番なんだけども、プレリュードは後半のフーガ部が、あまりにもテンポが遅すぎて退屈してしまった。
しかし、アルマンドは遅すぎず、速すぎずいいテンポで、苦悩するような深刻な感じも良く出ていて名演だと思う。
クーラントはやはりあまりに遅すぎてクーラントっぽくない。
サラバンド以下も、どうも退屈してしまった。
第6番も同様に、全体的に退屈で途中で飽きてしまう。


第1番から第4番までは、けっこういい演奏なんだけども。
数あるCDの中でも、一番、楽譜通りに、楽譜に忠実に弾いている盤ではないだろうか。
テンポを揺らしたり、頭の音を長めに伸ばしたり、というのが、全くないわけではないが、必要最小限度に抑えられていて、ほとんどが楽譜の音符通りに弾かれている。
これだけ生真面目に弾いているのにも関わらず、魅力をかもし出すのだから、意外とすごい演奏かもしれない。1番から4番までについてだけだけども…

(2010年5月29日加筆)

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